イタリア王国初代首都として栄華を誇ったトリノは、今なお街の中心部に高貴な雰囲気を色濃く残しています。その象徴とも言えるのが、雨の日でも傘を差さずに散策できる美しい回廊です。アーケード状に連なる柱が織りなす優美な空間を歩けば、まるで当時の貴族たちが闊歩していた時代にタイムスリップしたかのような錯覚を覚えるでしょう。

「貴族」という言葉は、遥か昔の存在のように感じられるかもしれませんが、イタリアでは今もなお、その称号が脈々と受け継がれています。中でもトリノは、サヴォイア家の影響を強く受け、イタリア随一とも言われる格式高いクラブが存在するなど、貴族文化が色濃く残る街として知られています。
トリノは、実は不思議なエネルギーが流れる町で、それは歴史がそうさせたのか、立地条件がそうさせたのかは分かりませんが、未だ解き明かされぬ不思議なエネルギーが満ちています。古くから「魔術の都」として知られ、白魔術の三大都市(リヨン、プラハ、トリノ)、そして黒魔術の三大都市(ロンドン、サンフランシスコ、トリノ)の双方に数えられるという稀有な場所。つまり、トリノは白と黒、相反する二つの力が交錯する、神秘的な都市なのです。
スピリチュアルな現象に興味がない方でも、この魅惑的な事実に触れれば、きっと心の奥底に眠る好奇心が目を覚ますはず。トリノは、旅のリストから外せない、特別な場所だというのがわかってもらえるでしょうか。
さらに、トリノはフリーメイソンという秘密結社が集結している場所でもあります。フリーメイソンとは、中世の石工組合が発端の神秘主義と啓蒙思想を保つ知識人の集まり。こちらは、スピリチュアル的に敏感であろうが鈍感であろうが関係なく、注意深く観察して町を散策すると、シンボルを見つけることが出来るそう。
例えば、トリノの象徴であるモーレ・アントネッリアーナ。その内部に描かれた星のシンボルや幾何学模様は、フリーメイソンの思想を反映していると解釈されています。彼らのシンボルは、建築、宇宙、精神世界を象徴する形を含み、コンパスと定規、ピラミッドの頂点に輝く目、そして白黒のチェッカーボードなど、様々な形で表現されています。

聞くところによると、フリーメイソンには、互いの絆を確かめ合う、独特の握手があるという。手の位置、指の添え方、力の込め方。それら一つ一つに意味が込められ、相手が会員であるか、どの階級に属しているかを見分けるための暗号となっているのだとか。
この話を聞くと、私は日頃どれほど無意識に握手を交わしているのか、改めて考えさせられます。何気ない日常の動作にさえ、秘密のメッセージが隠されているかもしれない。そう思うと、握手という行為が、途端に奥深く、謎めいたものに感じられてきませんか。
次回のトリノ訪問では、トリノの歴史の重み、そしてそこに隠された秘密のメッセージをより敏感に感じ取ってみたいと思っているのです。